2005年 01月 15日
まず副題がやばい。「神々への反逆」である。でも、読み進めるにつれてその言葉はけして大げさなものではないことを知る。過去において、未来は「神々の戯れとしての偶然」にすぎなかった。その「偶然」という不確実性を「リスク」と置き換え、人類は未来を如何に捉えてきたのか。ここに、人類の現在と過去を決定的に区分するものは、未来の計測を試みること、すなわち「リスク」という概念の誕生である、と作者は述べる。それゆえ、「リスク」という概念はそれまでの「神々の戯れとしての偶然」に対する"反逆"なのである。 著者のバーンスタインというおじさんは、かなりのエリートらしい。この本は「リスク」という概念が、いったいいつごろから、どのようにして生み出され、そして現在に如何に生かされているかという壮大スケールの物語を、丁寧に詳細に記述したノンフィクションである。古来、幾何学に優れ黄金分割の知識すらあったギリシア人でさえも、未来の、「リスク」の計測をこころみることはなかった。彼らにとって、未来は「予測」するものではなく、「神々の戯れとしての偶然」にすぎなかったのである。その時代までさかのぼり、人類がおぼろげながら「リスク」の概念を得て、そして大航海時代や経済発展と共にそれを磨き上げていく。それは、保険や金融商品、投資などのあらゆる場面に応用され、この複雑でタフなキャピタリズムを構成している。その様を読みすすめるにつれ、人類の現在と過去を画する概念のひとつは「リスク」の計測にあることを知る。そして、「リスク」の計測、ひいては確率というものは人類の叡智の極みであることを感じる。ただ、この本は「リスク」についての理論的、実践的な解説というよりは、その歴史を綴ったものであるので、その点に不満が残る人はいるかも知れない。ま、おもしろいと思うけど。わたしは楽しめた。さあ、enjoy。 わたしにとって惜しむらくは、この手の良書に出会うのが遅かったということ。これがバカの壁というやつだ。今でも、食わず嫌いで数々の面白いモノを看過してるのだろうと思う。
by oidon-kagoshima
| 2005-01-15 17:51
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